2019年5月24日
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羽生田たかしWEB通信5号
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前回のWEB通信4号ではワクチンに関する思いを書かせていただきましたところ、多くのご意見を賜り誠に有難うございます。
特にHPVワクチンについては沢山のご意見を頂き、重要性を再認識いたしました。日本の女性がこれ以上、子宮頸がんで苦しむことが無いよう、国内で年間約2,700人もの女性の命が奪われている子宮頸がんの現状と、わずか0.3%にとどまる接種率をどのように見直していくのか、多くの課題を抱えながらも前を向いて取り組むべきと考えますので、今後とも多くのご意見を賜ればと存じます。
そして今回は、前号でも言及しました、「現在のワクチン行政及び制度を根本より見直したい。」につきまして、もう少し詳しく説明させていただきます。
日本の予防接種は1948年、感染症から社会を守る観点により「予防接種法」が制定され、当時は12疾病のワクチンが義務接種となりました。これにより感染症による死者は大きく減少しましたが、一方で1960年代半ば頃からワクチンによる健康被害等が社会問題としてクローズアップされ、特に1989年に開始されたMMRワクチンに対しては訴訟が相次ぎ、わずか4年余りで中止に至りました。
このような背景の中、国民の不安ばかりが増大し、各方面からもワクチンの負の部分が強調され、ついに1994年予防接種法改正により「義務」が「努力義務」となり、接種形態も「集団接種」から「個別接種」へと変遷いたしました。その結果、予防接種が萎縮し大量の未接種者、いわゆるワクチンギャップという世代を生むこととなりました。
時代背景や社会情勢はあるものの、日本のワクチン行政は萎縮状態の中、定期接種と任意接種といった制度が併存し、それにより自己負担の有無や健康被害が起きた場合の救済も違いがあるといった複雑な構造を抱えることとなったのです。
私の個人的な見解ではありますが、そもそも予防接種は国策として国民の健康を守り、伝染及び蔓延の感染を予防する目的でありますから、国が先頭に立ってワクチンの政策、確保、製造に至るまでを国防として推進し国民を脅威から守るべきです。特に供給不足といった事態が起こらない生産体制と在庫の確保、もっと強く言えば、国の定期的な買い取りによる万全な供給体制の構築こそが、国民の安心と安全を守る施策であると考えます。
一方で今回私が敢えて問題提起をしたいのが、任意接種の料金についてであります。任意接種による副反応を患者側の自己責任であるかのようにした上、価格の一律化につきましては当然と言わんばかりに公正取引委員会が介入するのは甚だ疑問があります。患者からすると大変分かりにくく、なぜ子供のインフルエンザの予防接種代が医療機関によって差があるのか、分からないまま受診されている方も多いかと思いますが、これはインフルエンザ予防接種が任意とされているからであります。更に言えば、この価格を医療機関が一律にした場合、なんと独占禁止法の処罰対象となってしまう恐れがあるのです。
私はやはり薬価は公的に一律で、すべての国民が同じ恩恵を受けるべきだと考えます。予防接種の価格を申し合わせたら独占禁止法に触れるとの考えは「行き過ぎの自由」であると感じております。
その他、ワクチンに関する課題について私の問題意識をいくつか列挙します。
第一に、ワクチンには製剤そのものを取り巻く開発、承認、製造、供給及びや品質管理といった極めて安全性を必要とする問題がそれぞれの工程で存在します。特に季節性のワクチンはその年の株の決定から培養、製造、出荷までを迅速に対応する必要が迫られるもので、どこか一ヶ所でも不具合が生じれば供給時期が大きくずれ、国民の健康管理に甚大な影響を与えることとなります。
次に、よく質問で耳にするのが「定期接種化されていないのに接種勧奨であるものは打つ必要があるのか?」という声です。まさにその通りであり、日本の予防接種行政のダブルスタンダードの象徴とも言える質問であります。予防接種を受けることが必要なのか、それとも本当の意味での任意であるのか、日本の予防接種はこのままでいいのか、大変危惧をしています。
また、よくワクチンが不足する度に議論にのぼる輸入の問題、これは救済制度との関係も大変大きな問題であります。このように、一概にワクチンといってもさまざまな方面に亘る問題があります。
飛躍的な技術革新によって、世界のグローバル化は急速に進化し続けています。訪日外国人観光客の激増、ラグビーワールドカップ、東京オリンピック・パラリンピックの開催、超高齢社会に対応するための外国人材による就労機会の拡大など、グローバリゼーションの大きな波は年ごとに日本社会に押し寄せてきています。前号でも触れましたが、グローバル化はヒト、モノや技術革新と一緒に、病原体も世界各地にばらまくことになります。
私は以前、国会でも質問を致しましたが、技能実習制度や就労ビザの拡大等含め、観光だけでなく職場にも多くの外国人が入って来られることになります。国際間の協定でもありますが、特に職場においての大きな問題は「結核」であります。現状、出入国の際のビザ申請時に結核の検査結果を添付することを全ての国で実施しているわけではありません。法律で結核を持ち込まず持ち出さず、となっているにもかかわらず、結核すら手放しの入国審査である危険な実態を国会の場で質問をいたしましたが、未だ実施されていません。
これら海外からやってくる感染症の脅威から国民を守るべき緊急事態の中、令和の新しい時代を迎えた日本を、感染症という侵略から国防の観点で国家戦略とし断行する使命を政治はもう一度改めて見つめ直すべきではないでしょうか。
この国のワクチン政策を、そして感染症対策を国防としてしっかりと議論し確立して行かねばならないと考えています。
参議院財政金融委員会 理事
自民党厚生労働部会 部会長代理
医師の働き方プロジェクトチーム 座長
参議院議員
羽生田 たかし
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